ケース別遺言Q&A1

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Q私(遺言者)には、不動産を含む全財産を法定相続人である妻と子2名のうち妻にのみ相続させたいと思っています。子どもは独立し、家庭も持っていますが、妻は私の死後1人で生活していくと思うと心配です。どうしたらよいでしょうか。

A子2名に遺留分放棄を希望する条項を記載しておきます。
妻に、全財産を遺言により相続させたいと思っても、本件では、子には4分の1(2分の1×2分の1)の遺留分があります。
今回の相続では、妻に全財産を相続させても、妻が亡くなったときの相続では、子2名だけが相続人となります。
その点を説明して、法的拘束力はありませんが、子が遺留分を請求しないように、遺留分を放棄する旨希望する記載をしておきます。
たとえば「長男A及び長女Bには、遺言者の意思を尊重していただき、遺留分を放棄してくれるよう希望します」と記載しておきます。

Q私(遺言者)は、不動産を含む全財産を法定相続人である妻と自分の両親のうち妻1人にのみ相続させたいと思っています。両親はマンション経営などもしており資産もあり、高額な年金も得ているのですが、私たち夫婦には子どももおらず、私の死後、妻の生活が心配です。どうしたらよいでしょうか。

Aやはり両親に遺留分放棄を希望する条項を記載しておきます。
両親には3分の1の法定相続分がありますから、全財産を妻に相続させるには、遺言が必要になります。そして、両親には6分の1(3分の1×2分の1)の遺留分があります。遺留分を侵害する遺言内容も無効ではないのですが、減殺請求される可能性があります。
そこで、両親には遺留分を請求しないようにしてもらう条項を作成しておきます。

なお、すべての財産を1人に相続させるには「遺言者の有する全財産を妻Bに相続させる」と遺言してもよいのですが、相続財産を列挙して「相続させる」とすることもできます。
たとえば、「遺言者は、その所有する左記を含む遺言者の全財産を妻Bに相続させる」として、土地・建物・預金・株式等を列挙します。
その際、財産の特定が重要なので、土地や建物は登記事項証明書記載の通りにします。

Q私(遺言者)には、法定相続人として妻と子2名がいます。土地と建物と預貯金がありますが、借入金1,000万円があります。借入金1,000万円については、妻には承継させたくなく、過去2,000万円の資金援助をしてきた長男Aに引き継いでもらいたいと考えています。どうしたらよいでしょうか。

A、1,000万円の借入金について、長男に引き継いでもらう希望をのべておくことが考えられます。
まず確認しなければならないことは、残念ながら、借入金については遺言で処分することはできません。金銭債務は、被相続人の死亡とともに、法定相続分に従い当然分割承継されるからです。
金銭債務を特定の相続人に負担させる旨の遺言をしても債権者との問題では対抗できないのです。
しかし、遺言で上記のような希望を述べておき、長男など相続人が債権者と交渉等して、長男が金銭債務を引き継ぐことも可能です。
条項としては、たとえば「遺言者は、負担している債務(別紙記載)を長男Aが負担して支払うものとし、妻乙と二男Bには負担させないこととする」と記載します。

Q私(遺言者)の法定相続人は妻と長男A、長女Bでありますが、妻が認知症にかかっており、現在私がその世話をしています。私の死後、妻のことが心配です。どうしたらよいでしょうか。

Aまず、認知症になっている妻の生活を考えた場合、妻自身に多くの財産を相続させることが考えられます。
つぎに、母親の世話をすることを条件に、長男Aに財産の大半を相続させることもできます。これを負担付遺贈と言います。
ポイントは、遺言書には負担(条件)を具体的に記載することです。認知症の妻の介護が条件となっているので、社会福祉士や介護会社とあらかじめ相談して、負担内容(条件)を具体的に決めておくのもよいでしょう。

問題は、長男Aが遺産を受けとったにもかかわらず、母の介護(負担)の義務を果たさない場合です。この場合は、 他の相続人(妻や長女B)は、負担の内容(母の介護)を長男Aに請求できます。それにもかかわらず、相当期間内に、負担を履行しない場合には、家庭裁判所に遺言の取消しを請求できます。

なお、本ケースの場合、妻に全財産をあげて、財産の管理や療養看護を任せる「成年後見人」を選任する方法もあります。
たとえば、「長男Aは、遺言者の死後、早急に妻乙の後見人選任の手続きをとること」と記載します。
成年後見人は行政書士などもできますが、長男Aがなることもできます。

※成年後見は、精神的な障害や認知症などで判断能力が欠けていたり、不十分な場合に、財産の管理や療養看護を行う制度です。成年後見人は家庭裁判所が選任し、裁判所の管理監督のもと後見業務を行います。

Q私甲(遺言者)の法定相続人は長男A・長女B・二女Cでありますが、二女Cは未婚で、妻の死後、病身の私の面倒を献身的に見ています。私は、二女にできるだけ多くの財産を相続させたいと思っています。どのような遺言内容にしたらよいでしょうか。

A遺言書に二女の寄与分について記載することがよいでしょう。
寄与分とは、被相続人の財産の維持や増加に貢献した相続人に法定相続分とは別に相続分を認めようとする制度です。
二女の貢献が、介護会社等に依頼せず、甲の財産の流出を食い止め、財産の維持に貢献しているので、遺産の何割かを寄与分として認めてもらうように記載します。
たとえば「遺言者は、妻が他界して間もなく、腎臓を患い、入退院を繰り返す生活が6年続いたが、その間同居している二女が献身的に面倒をみてくれている。そのため家政婦を雇うことなく、治療療養を受けることができ、また、遺言者の財産の維持に寄与している。その価値は遺産の3割をくだらない」と記載します。
寄与分は、相続人の話合いで決まるので、遺言に書いても法的拘束力はありませんが、寄与分を認めるか、認めるとすればどの程度の額かを話し合う上での有力な判断材料となります。
二女の貢献が遺言者甲の財産の維持増加に、どのように貢献したのかを具体的に記載することがポイントです。

※寄与分のバリエーション
たとえば、二女が遺言者甲の経営する店を手伝った場合。
「二女Cは、高校卒業後、20年に渡り、家業の生花店を他の従業員の給料の半額で手伝ってくれた。二女Cの貢献のおかげで店を大きくすることができた。他の相続人は2割を寄与分として認めてほしい」と記載します。

Q私(遺言者)には、財産として、アパートがあります。法定相続人は2名(長男A・長女B)おり、長女Bの夫がギャンブルに凝り、浪費癖があるので、娘に財産を相続させると、その夫に財産をギャンブルで一挙に消費されてしまう恐れがあります。どうしたらよいでしょうか。

A負担付遺贈を長男Aにすることで問題を解決します。
たとえば、「遺言者は、後記アパートを長男Aに遺贈する。その負担として、受贈者Aは、遺言者の長女Bの生活費として、毎月10万円ずつ同人方に持参又は送金して支払わなければならない」とします。
そうすれば、長女Bには毎月一定額の収入が確保される一方、夫に消費される可能性も低くなるでしょう。

注意すべきポイントは、受贈者(長男A)は、負担付遺贈を放棄することができるので、遺言者は負担額(毎月10万円の支払)以上の、財産を受贈者に遺贈して、受贈者が遺贈を放棄しないように頼んでおくことです。
長男のアパート収入が毎月10円以上あることが必要でしょう。

※また、上記以外の方法では、遺言による不動産管理信託や生活資金給付信託をすることも考えられます。

Q私(遺言者)の法定相続人として妻と長男A長女Bがいますが、長男が会社を退職し、店を開くということで、金1,500万円の資金をあげました。だから、長男Aには私の財産を相続させなくともよいと考えています。どうしたらよいでしょうか。

A特別受益のもち戻しの記載をしておくのがよいでしょう。
たとえば、「遺言者は、長男Aが機械製造会社を退職し、飲食店を開業するにあたり、生計の資本として、金1,500万円を贈与しているので、この金額を特別受益として持ち戻すこと」と記載します。

相続人の中の一部の人が、被相続人から生前贈与を受けていたり、遺贈を受ける場合、相続分の算定に当たり、これらの生前贈与や遺贈を全く考慮しないと、その相続人だけが有利となり不公平になるので、その分を遺産の中に持ち戻し再計算しようとするものです。
被相続人の財産処分のうち、遺贈と、生前贈与のうち1婚姻養子縁組のための贈与、2生計の資本としての贈与です。
結婚式の費用や住宅購入費用なども特別受益になります。

特別受益のもち戻しのポイントは、誰に対する、どの生前贈与が特別受益になるのか、金額はいくらになるのかを具体的に記載しておくことです。

※なお、特別受益の持ち戻し免除もできます。
たとえば、「遺言者は、長男Aに平成○年、飲食店開業に際して、金1,500万円を生計の資本として贈与してあるところ、長男の努力にもかかわらず、営業不振であることを考慮し、相続分は、前記贈与がなかったものとして算定すべきものとする」と記載します。

Q私(遺言者)には、妻との間に2人の子どもがいますが、その他に交際している丙女との間に未成年の子1人がいます。今は、妻のこともありその未成年の子を認知できません。しかし、そこ子の将来のことも心配です。どうしたらよいでしょうか。

A嫡出でない子は、生前に認知もできますが、遺言によっても認知できます。認知すると法律上の親子関係が生じます。
遺言には、子の住所、氏名、生年月日、母親の氏名を明記します。
その子に財産を遺言により相続させるときは、「相続財産の何分のいくつ」という相続分の指定ではなく、特定財産(D土地とかE銀行の定期預金とか)を指定しておいたほうがよいでしょう。トラブルを防ぐためです。

認知は届出が必要です。遺言の効力が生じたときは、遺言者はすでに死亡しているので、遺言者にかわって認知の届出をする人が必要です。
そこで、認知の遺言をするときは、遺言執行者を指定しておきます。

Q私(遺言者)は夫に先立たれ、長男A(10歳)がいますが、私は病気がちで体調がすぐれず、いつ他界してもおかしくありません。長男Aが心配です。どうしたらよいでしょうか。

A未成年後見人を遺言で指定しておきます。
相続人である子が、未成年の場合、親権者である遺言者の死後、もう一方の親が親権者として存在すれば後見人を指定することはできませんが、本件では父親は他界しています。そこで後見人を指定することができます。

未成年後見人は、親権者にかわって、子の教育、監督、財産管理を行うことになります。後見人には信頼できる人を選び、事前に承諾を得ておくことも必要です。
後見人を決めても、なお不安が残る場合は、後見監督人を指定することができます。

Q私(遺言者)甲は、甲株式会社の全株式を有し、同社の代表取締役社長ですが、私の死後は長男Aに甲会社を経営してもらい社長の地位を譲りたいと考えています。どのような遺言内容にしたらよいでしょうか。

A長男Aに甲会社の株式を遺言で相続させます。
まず前提として、遺言で「長男Aを代表取締役に指名する」と記載しても法的効力はありません。代表取締役は、取締役会や株主総会で選任されるからです。
ですから遺言で決めることはできません。
ただし、かかる記載は、相続人らに遺言者の遺志を明確にし、これを尊重するよう求めたり、争いを未然に防止する効果はあるでしょう。
株主総会等は、株式数でその意思が議決されますから、希望する後継者が株主総会で多数を得られるようにする株式が重要です。株式は甲の個人の財産なので、長男に遺言により株式の全部を相続させることができます。
たとえば、「遺言者は、遺言者の有する甲株式会社のすべての株式を長男Aに相続させる」と記載します。

また、会社名義の財産は、個人の所有物でなく会社の所有物なので、遺言の対象にはなりませんので注意をする必要があります。
もっとも、遺言者名義の個人財産から会社の事業用に供している財産は相続の対象になりますので、こちらも長男Aに遺言で相続させることができます。
たとえば、甲個人名義の不動産・備品・営業権・のれん・現金・債権・特許権などです。

Q私(遺言者)は妻乙とともに農業を営んでいますが、長女Aは嫁に行き、長男Bは都会に出で会社員になり、家業の農業を継ぐ者は農業を手伝っている二男Cしかいません。財産としては、農地の他は、自宅だけであり、これらを二男Cに相続させたいと思っています。農地を遺産分割で細分化すれば農業経営が成り立たなくなるからです。どうしたらよいでしょうか。

A農業を継がせるためには、「すべての財産を二男Cに相続させる」と記載し、財産を具体的に記載します。
ただし、妻乙と長女Aと長男Bには遺留分があります。預貯金や農業用財産以外の財産があれば、これを遺言で他の相続人に割り付けることで遺留分の問題を回避できます。そうすれば、農地を細分化せず農業経営を継続できます。しかし本件ではそのような財産はありません。

ただし、他の相続人の遺留分を侵害する遺言であっても、当然に無効ではなく、減殺請求に服するだけで、相続人が遺留分を主張しないことも多いのです。
遺留分減殺請求の消滅時効は1年なのですぐに行使できなくなります。遺言があれば、乙ABの同意や押印なしで、C単独で登記の移転手続きができますので、遺言者のすべての財産をCに相続させるとするのも意味があります。
また検討するのが、乙ABに何か特別受益にあたるものはないか、あるいはCは遺言者の農業を手伝っているので、遺言者の財産の維持・増加に貢献したとして寄与分はないかを検討します。

それでも心配ならば、妻乙の扶養・介護を二男Cがするとの条件を付けて遺贈します(負担付遺贈)。あるいは、二男Cに遺留分に相当する代償金の支払いを条件とすることです。支払は月々の分割払いでもよいでしょう。

記載例として、「1遺言者は、二男Cを農業の後継ぎとし、遺言者の有する次に定める全財産を包括して、これを二男Cに相続させる。(1)土地~ (2)建物~。2二男Cが前条記載の財産を相続したときには、その代償として、乙・A・Bに、次の義務を負担してください。(1)遺言者の妻乙を扶養し、かつ生活の面倒をみること。(2)長男A、長女Bに代償金200万円をそれぞれ支払うこと」と記載します。

Q私(遺言者)には、妻と2人の子がいますが、妻は15年前に預金の全部(1,000万円)を持ち出したうえ、子を連れて家を出て、以来音信不通です。私には、母と姉・妹がおり、財産としては住居している建物と敷地と預貯金があります。土地と建物は自分の父から相続で取得したものです。昨年、私が入院した際も姉と妹が看病してくれており、お墓の管理も近くに住む妹にしてもらわなければならないので、姉と妹に財産を相続させたいのですが。どのような遺言内容にしたらよいでしょうか。

A妻子がいるので音信不通になっていても、母、姉と妹には相続権がありません。姉と妹には遺言により財産を遺贈することになります。
ただし、妻子には遺留分があります。このケースでは遺留分を行使させる可能性が高いので、土地と建物は自分の父から相続したものであることを付言事項で記載し、妻子に理解を得る必要があります。

また、祭祀用財産(お墓・仏壇など)の所有権は、一般の相続の対象とはならず、祖先の祭祀を主宰すべき者がこれを承継します。その主宰者は第一次的には被相続人の指定(遺言など)により、それがない場合には慣習により定められます。
遺言による場合は、たとえば「遺言者は祖先の祭祀を主宰すべき者として、Bを指定する。祭祀及び墳墓に関する権利は同人に承継させる」と記載します。

Q私(遺言者)は、膵臓がんで余命2か月と医師に言われ、身辺整理をしておきたいのですが、高校生の甥のことが心配です。なぜなら、甥は父親(遺言者の兄)を早く亡くし、小さい時からアルバイトをして苦労しています。何とか大学進学のための学資を卒業まで出したいと思っています。どうしたらよいでしょうか。

A遺言をして、学資を援助することができます。
その方法として、1直接学資に見合う財産を甥に遺贈する。2相続人に遺産を相続させるが、毎月定まった額の学資を相続人に支払わせるもの(負担付遺贈)、3信託を利用する方法があります。

また、遺言を公正証書で作成したい場合は、遺言者が動けなくなっているときなどは、公証人が病院まで出張してくれ、遺言を作成してくれます。
なお、それまでに遺言者の病状が急変し、間に合わない場合、死亡危急時遺言をすることができます。医師など証人3人以上の立会で、その1人に遺言を口授し、口授を受けた者がこれを筆記して、遺言者及び他の証人に読み聞かせ又は閲覧させ、各証人がその筆記の正確なことを承認し、署名押印することにより作成するものです。

Q同居していた長男が昨年急死しましたが、その妻Bは一人息子Cとともに家に残り、遺言者夫婦の老後の面倒をみてくれており、お墓も長男の妻Bに託したいので、居住している家屋とその土地等財産の多くをBと孫Cに残してやりたいと思っています。どうしたらよいでしょうか。

A長男の妻は、遺言者との間では一親等の姻族ですが、相続権はありません。どのような面倒をみようと土地や建物を相続できません。この両親が亡くなった後は、居住建物について所有権はなく、不安定なものとなります。そこで生前贈与してもらうか、遺言遺贈してもらうほかありません。
生前贈与は、多額の贈与税がかかるし、また今度は逆に遺言者夫婦が不安定な立場になります。そこで、「遺言者は、遺言者の所有する次の土地および建物を亡き長男の妻Bおよび孫のCに各2分の1の割合で、遺贈し、相続させる」とします。
ちなみに、Bは相続人ではないので「遺贈」になり、Cは代襲相続人なので「相続」という表現になります。

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