ケース別遺言Q&A-3

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(子どもがいないケース)
Q夫(A)と妻(B)には、子どもがいません。夫の両親は他界しており、夫の兄弟が2人います。AとBは共働きで、互いに助け合い、夫婦の財産を築きあげてきました。夫が先に死亡した場合に備えて事前に対処しておきたいのですが。


A 夫が先に死亡した場合、夫の兄弟姉妹にも相続の権利があります。すると夫婦でともに築き上げてきた財産をAの兄弟姉妹にもあげるのは、あなた(B)としては納得いかないでしょう。また、遺産分割の話合いをあなた(B)とAの兄弟でするのは避けたい気持ちもあるでしょう。
ですから、AはBにすべての財産をあなた(B)に相続させるとの遺言書を作成すべきでしょう。
兄弟姉妹には、遺留分がないので、遺言書を作成しておけば、すべてあなた(B)が遺言相続できるので安心です。


(障害者のいるケース)
Q 私は、独身で子どももいませんが、兄弟が他に3人います。両親は他界しております。そのうちの1名(妹)が障害者(1級)で、私と一緒に自宅で暮らしており、私が面倒をみています。私が亡くなった後、障害のある妹の将来が心配です。私の財産は、預貯金と宅地建物とその他の土地です。

A 障害のある妹さんに相当の財産を相続させる遺言書を作成したほうがよいでしょう。そうでなければ、あなたが亡くなった後、兄弟が相続人となり、3人で法定相続になるのが原則だからです。障害のある妹さんに相当額の財産を遺言相続させます。ただし、他の兄弟の人2人にも多少の財産をあげます。障害のある妹さんの面倒をみることになるからです。宅地と自宅は障害のある妹さんに遺言相続させます。居宅がなくなると障害のある妹さんが居住するところがなくなり困るからです。
他にも土地があるとのことですが、農地とかの場合なら、生前に売却して金銭に代え、金銭を障害のある妹さんに遺言相続させるのがいいでしょう。なぜなら、耕作放棄地とかになった場合、草刈りとか土地の管理にお金がかかってしまうからです。将来、障害のある妹さんの金銭負担にならないようにするのがよいでしょう。


(独身のケース)
Q 私(A)は、独身で配偶者もなく、子どももいません。両親も他界し、妹と弟の兄弟がいます。妹(B)も独身なので、お金を半分ずつ出し合って、私(A)と妹(B)の共有名義でマンションを購入し、2人で居住しています。2人のうちどちらかが先に死亡した場合に備えて事前に対処しておきたいのですが。

A あなた(A)が死亡すると、相続人はBと弟になります。なぜなら、あなたには配偶者も子どもも両親もいないからです。あなたが死亡し、相続が開始すると、弟が法定相続を主張すれば、妹(B)と弟との共有になり、共有名義でマンションの登記をするか、売却して金銭で分けなければなりません。そうすれば妹(B)は、安心してマンションに居住できなくなります。あなた(A)は、遺言書を作成して、妹(B)にマンションを相続させれば、安心して妹(B)が住み続けることができます。
このことは、先に妹(B)が死亡した場合も同じであって、妹(B)にマンションをあなた(A)に相続させるとの遺言書を作成してもらってください。


(離婚のケース)
Q夫(A)は、先妻と離婚して、その間にできた子どもBを引取り養育していました。その後、縁あって、Cさんと再婚しまし、その間に子ども(D)ができました。今は、Aさんも元気で、後妻のCさんは2人の子どもを育ててくれ、家族4人仲良く暮らしています。

A 先妻の子、後妻、後妻との間にできた子の立場は、あなた(A)さんが死亡すると状況が大きく変わるでしょう。Cが自分と血のつながりのない他人であるBを冷遇することも、家から追い出され元妻の元に返されることも考えられます。あなた(A)さんとしては、Bのことは大変気がかりです。そこで、あなた(A)としては、遺言書を作成して、自宅は売却して金銭に代え金銭を均等に分け、預貯金もBとDで均等に分けるようにすることもできます。
遺言を執行するときにBが未成年の場合、後見人が必要となるので後見人に信頼できる人を指定しておくとよいでしょう。
遺言は高齢になってから用意しようと考えている人がいますが、不慮の事態はいつ起こるかわからないので、家族関係が複雑で不安があれば早めに用意しておくことが大切です。


(認知した子供がいるケース)
Q 会社社長のAさんは、妻との間に1人の子がいます。Aさんには相当の財産もあるし、将来はその子に会社を継いでもらいたいと考えています。ところが、昔、Aさんには愛人がいて、その間に認知した子がいます。

A 会社社長のAさんが亡くなると、妻やその間にできた子と認知した子が遺産分割協議をしなければならなくなります。当然円満にいかないことが予想されます。実子と認知した子は、法律上は兄弟であっても、当人たちは感情面では両者受け入れがたいでしょう。
Aさんの遺言があれば当事者が会うこともなく、手続きを済ませることができます。認知した子に、Aさんが生前相当の財産を贈与しておけば、認知した子も納得し、認知した子に分与なしと遺言書に記載しておいてもよいでしょう。


(再婚のケース)
Q 私は結婚していますが、夫との間に子どもはいません。夫は再婚であり、先妻との間に子どもがいます。私には両親はすでに亡くなっていますが、両親の面倒をみて、実家に供住している妹がいます。亡くなった父からは、私は相当の土地を相続しています。妹は、結婚していて子どももいます。将来的には、妹の子どもに私の実家を継いでもらいたいと思っていますが。

A もしあなたが、夫より先に亡くなった場合、あなたの相続財産のうち夫が4分の3相続し、大部分が夫にいきます。そこまではいいでしょう。しかし、今度は夫がなくなると、あなたから相続したあなたの実家の土地が、夫と先妻のとの間にできた子どもに相続されます。あなたとしては予期しないことでしょう。できれば将来的に実家を継ぐ妹に相続させたいでしょう。ですから、遺言書を作成して、妹にあなたの土地を相続させてもいいでしょう。
なお、妹が先に亡くなっても、遺言が生かせるように、あなたが先に死亡しても妹の子に相続させるとの予備的遺言をしておくといいでしょう。


(自宅不動産に住居しているケース)
Q 長男Aさんには、妻と子の他に母と2人の兄弟がいます。Aさんの父親はなくなっていますが、母親の面倒をみながら同一所帯に住居しています。Aさん家族は母と同居し面倒をみているのだから、母が亡くなった後、家と宅地を相続したいと思っています。しかし、弟たち2人の妻が、財産を取ってくるようにとけしかけていて、弟たちも財産を欲しいといっています。

A この場合、母親が亡くなり、相続が開始すると、兄弟3人の話合いによると、もめるのは確実でしょう。そこで、お母さんに遺言書を作成してもらい、自宅と宅地をAが相続することがよいでしょう。とすれば、弟たちの遺産分割協議をすることなく、手続きできます。仮に、弟たちが遺留分を主張しても法定割合の半分になるので(本ケースの場合、6分の1)、Aさんは自ら用意した金銭でまかなえるでしょう。


(同族会社のケース)
Q 会社の会長Aさんには、妻はなくなっていますが、2人の子ども、嫁に行っている長女Bと長男Cがいます。長男Bが会社の後を取り、社長として業務を遂行していますが、体調がすぐれないのでCの子D(A会長の孫にあたる)が、右腕となって実質的に会社を切り盛りしています。Aさん名義で、土地、預貯金や賃貸ビルがあって、貸しビルは安定した収入源となっていて、この収入が会社の助けとなっています。

A 将来Aさんが亡くなり、相続が開始すると、長女Bと長男Cが相続人となり、嫁に行っている長女Cも法定相続分2分の1の権利があります。長女Cがこの権利を主張することも考えられます。貸しビルは安定した収入源なので、同族企業の場合、会社を継ぐ人に、その所有権を移転したいと考えられます。
そこで、実質的に会社を取り仕切っている、孫のDさんに貸しビルを遺言によって遺贈するのがよいでしょう。(この場合Dさんは、Aさんの相続人でないため相続にはなりません)長女Bには遺言の中で相当額の金銭を分与しておけばよいでしょう。
遺産分割でもめるのは、会社経営には致命的なので、Aさんが元気なうちに長女B、長男C、孫Dを交えた家族会議を開き、意思をまとめておいて、関係者の合意を得ておくのも重要でしょう。


(農業のケース)
Q 長男Aさんの父親Bは先祖代々の土地を耕し、農業を営んでいる。しかし高齢になってきたため、会社員だったAさんは会社を辞め、父親の農業を手伝っている。Aさんには妻と1人の子どもがいて、家族全員で父親BさんとBさんの自宅で同居している。Aさんには姉が2人いてすでに嫁に行っています。Aさんは、父親の農地の相続のことで心配しています。

A 父親Bさんが亡くなり、相続が開始すると、Bさんの財産の大部分は農地であるため、農地を分けるか、売却することになってしまい、Aさんは農業を続けることができなくなってしまします。
ただ、父親Bさんは、昔風の人で、嫁に行った娘さん2人は、相続になれば当然Bさんの遺産を放棄してくれるものだと信じています。
しかし、今は農家といえども、分割相続が当たり前になっているし、分割できなければ応分の代償金を支払うのも普通になっています。
そこで、Aさんは、現代の農家の相続の事情につき、父親であるBさんに事情を説明し、遺言書を書いてもらうことにしました。


(同居しない長男に分与をしないケース)
Q 長男Bと長女CがいるAさんは、妻を亡くし1人暮らしである。長女CがAさんの面倒をみるというので、AさんはAさんの家の近くにCに家と宅地をAさん名義で購入した。Cは夫婦でそこに居住している。一方、長男Bとその妻は、Aさんと同居したくもないし、面倒も見たくもないといっている。しかし、長男Bはお金に困っており、Aの相続の権利はきちんと主張するといっている。

A 長女Cさんは親の面倒も見ており、そのため家と土地をA名義であるが購入し、そこに夫と居住している。Aが死亡し相続が開始すると、長男夫婦はきちんと権利を主張すれば、今住んでいる土地と家を明渡、売却などすることになる。そこで、Aは遺言書を作成し、自宅や宅地を長女Cに相続させれば、財産争いで売却する必要もありません。
Aさんは、長男Bの遺留分を計算し、相続させる預貯金等を決めたので、相続になっても、もめることはないでしょう。


(娘が結婚し家を継ぐ者がいないケース)
Q 母親Aさんは、夫を亡くし1人暮らしで、3人の娘長女、次女、三女がいるがいずれも結婚している。Aさんには土地と建物があるが、娘3人と話し合い三女がAさんの面倒をみてくれるといい、家やお墓を守ることを了解してくれた。

A 子どもが全員娘さんたちで、嫁いでいるため実家を継ぐ者がいないときは、関係者で話し合い、家族の意思を確認しておくことが重要です。
この場合、母親の面倒をみてくれて、家やお墓を守ってくれる三女に遺言で相続させるのがいいでしょう。他の娘さんたちにも、預金等の一定額を遺言で相続させればいいでしょう。
なお、三女の子ども(Aさんからみれば孫)がいる場合、Aさんの養子とすれば、相続税の基礎控除が増します。
しかし、そうするとほかの相続人と感情論に発展することや、姓が変わるなど孫の人生にも影響するため、慎重な判断が必要です。相続税対策ばかり重視しないようにすることも大切です。


(子どもたちに思惑があるケース)
Q Aさんは多数の不動産をもち、これを賃貸する賃貸業をしています。Aさんには妻と長男と長女がいます。Aさん自身、自分は長男だったので、親の財産をすべて相続し、ほかの弟妹には分けませんでした。昔はそういうことが普通だったのです。しかし現代は、弟妹といえども、相続についてはいろいろ思惑があり、きちんともらえるものと思っています。

A 妻が自宅、長男が貸しビル、長女は借家を相続したいと考えている場合、家族で事前に話合い、その内容をできる限り、遺言書に反映します。
長男が全財産を相続するというのが当然という考え方は現代ではほとんどありません。家族の希望を聞いてみると自分とは違う考えをもっていることに気付くことが多いでしょう。
各自の意思を確認することが妥当なケースでは、あらかじめ確認して、遺言内容を決めれば、相続争いを未然に防ぐことができます。


(不動産共有のケース)
Q 夫Aさんは、妻と結婚し、子どもが1人います。宅地つき自宅に家族で暮らしているのですが、自宅と宅地を購入する際、Aさんのお父さんBが資金を半分出したので、それぞれ共有名義となっています。お父さんの推定相続人には娘さんが一人います。

A お父さんが亡くなり相続が開始し、娘さんが法定相続を主張すると、Aさんの暮らしている自宅と宅地の半分はお父さんB名義なので、その権利の2分の1が娘さんに行きます。娘さんが権利を主張するとAさんの自宅が不安定になります。そこで、お父さんBに、Bの持分の建物と宅地をAに相続させるとの遺言をしてもらいます。娘さんには遺留分相当額の預貯金等を分与しておきます。遺言があれば、Aさんの家族は安心して自宅に住み続けることができます。不動産に住んでいる相続人がいる場合は、遺言書で指定しておくことが大切です。

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