継続的取引契約書

商品継続的取引契約書作成において注意すべきポイントを解説します。

1、ポイント―基本契約
商品の取引においてメーカー対代理店、特約店などの間には継続的に商品が売買されますので、個々の売買取引の基本たる事項を定める契約書が必要です。
この契約書は個々の売買契約が電話一本の注文と承諾でどんどん行われているため、基本事項の明確化を図ることが目的です。
つまり、個別的な売買契約はそのときの約定で個々に取引条件を定め、継続的商品取引契約は基本的姿勢を示しておけばよいことになります。
たとえば「売主甲は買主乙に対し、甲製造にかかる左記商品を継続的に売り渡すことを約し、乙はこれを買い受ける」と規定します。
そして「本契約に基づく個々の商品の売買取引については、乙の注文に応じ甲がこれを承諾して売買契約が成立するものとし、その具体的な方式は別途定めるところによる」と規定します。

2、ポイント―支払条件(代金決済)
支払条件(代金決済)は商品継続的取引契約では重要な事項です。しかし、継続的商品取引契約書においては、具体的に記載される場合は、非常に少ないです。というのは、経済情勢、金融事情、商品の売手と買手との間の力関係によって支払条件は大きく変わるため、基本契約で規定して固定化してしまうと不便だからです。債権確保を重視すれば現金支払いを原則としたほうが良いでしょう。
たとえば「代金の支払いは、毎月末日までに納品した分につき、翌月末日までに持参又は送金して支払う。ただし、甲(売主)が認めた場合は、乙(買主)は90日以内の約束手形を支払いのため振出して支払いの猶予を受けることができる」とします。

3、ポイント―責任取引数量
大衆の日常使用する商品は販売店側(買主)に1か月一定額あるいは一定数量以上の商品を買い取る義務を課している例があります。
時には販売店側(買主)の注文もないのに販売キャンペーンなどと称して販売店に対して、商品を送りつけてくる場合もあります。
このような押付は独占禁止法違反の疑いがありますので強行することはできません。数量に達しない販売店に対して、感謝金、リベートなどで差をつけるのはやむを得ないとしても、基本契約の解除は法律上許されないと考えるべきでしょう。
たとえば「乙の責任取引数量は1か月金○○万円相当額の商品とし、この金額に達しない期間が○カ月以上継続するときは売主甲から買主乙に支払うリベート、感謝金等の優待をうけられない場合がある」と規定します。
なお、感謝金、リベートは一種の商慣習として行われており、販売促進の刺激のため、あるいは再販売価格維持のために利用されてきました。これが極端に走り、金額も増大するようになると独占禁止法に抵触することがあります。

4、ポイント―担保提供の規定
継続的商品取引契約の目的は、商品を供給する側の債権確保に重点があります。
たとえば「買主乙は売主甲の要求があった場合は、本契約上の債務担保のため甲の指定に従い、左の一つ又はあわせて二つ以上の方法を取らなければならない。
甲の認める連帯保証人を立てること。不動産を担保に供しこれに根抵当権、代物弁済予約による所有権移転請求権を設定すること。保証金を差入れること。乙の売掛金の譲渡、もしくは代理受領権を甲に与えること」と規定できます。

5、ポイント―供給義務
商品の供給側に継続的に商品を供給する義務がどの程度あるかという問題があります。たとえば、契約期間を2年とすると、2年の期間の到来する3か月前までに供給者の側から「期間満了と同時に取引を終了させたい」と意思表示すれば、それで従来の関係を断ち切れるかというと疑問が残ります。やはり断ち切るには正当な理由たとえば販売店側の信用不安、著しく取引量が低下した事実、などの理由が必要でしょう。というのはこのような取引契約では書面上の期間の限定にかかわらず永続することを予定しているものでありかつ販売店側も商品の運命をこの契約に託している場合が多いからです。この実情を無視して理由なく打ち切れば供給者側は債務不履行になり、損害賠償義務を負う危険もあります。

6、ポイント―契約期間の定め
契約期間は通常は1~2年として、自動更新の規定を置く例が多いでしょう。期間を定めないこともできます。

7、ポイント―契約解除
たとえば「買主乙が本契約に違反したとき、もしくは第○条により債務につき期限の利益を失ったとき、及び左の場合には、甲は本契約を将来に向かって解除することができる。買主乙につき信用上重大な変化があったとき。乙につき組織上重大な変化があったとき」とします。

8、ポイント―相殺条項
売主買主が互いに債権債務を負担する関係すなわち相互に売主であり買主であるような取引関係のときは債権債務を支払期限前でも相殺できるという相殺予約の条項を設定しておくことが第三者の差押に対抗するために必要です。
たとえば「売主甲が買主乙に対して債務を負担するときは甲の乙に対する債権が弁済期前であっても、甲はこれをもって対当額について相殺することができる」と記載します。

9、ポイント―再販売価格維持
生産者や発売元は商品の卸売価格、小売価格に対し大きな関心を寄せています。したがって再販売価格(買主側が転売する価格)をメーカー又は発売元の指示通りに守らせることを期待しています。
しかし、再販価格を維持する契約は独占禁止法に違反するおそれがあります。

10、ポイント―地域指定事項
これも独占禁止法に違反する場合があるので注意が必要です。

11、ポイント―合意管轄
訴訟になったとき非常に便利な規定です。売主が千葉、買主が九州や北海道など遠隔地のときは必要不可欠の規定です。たとえば「本契約に関する争いは甲(売主)の本店所在地を管轄する地方裁判所を第一審の管轄裁判所とすることに合意した」とします。