債権譲渡契約書

債権譲渡契約書作成のポイントを解説します。

1、ポイント―必要性
債務弁済のために、債務者が他にもっている債権を債権者に譲渡し、債権者に取り立ててもらいます。つまり債権者が債権を取り立てて回収し自己の弁済に充当するためになされます。

2、ポイント―譲渡の効果
債権者が譲り受けた債権を実際に取り立てた分だけ元の債権は消滅しますが、債権を譲り受けたというだけでは、元の債権は当然には消滅しませんから、債権者にとっては、譲り受けた債権は元の債権の担保の役割を果たすことになります。譲り受けた債権を回収して、その回収金を債権の弁済に充当して初めて元の債権が消滅します。

これに対して、「弁済に代えて」債権を譲渡しますと、譲り受けと同時に元の債権は消滅します。そこで担保として債権を譲り受けるためには、「弁済のため」「弁済方法として」というように記載しておく必要があります。
たとえば「乙は甲に対し本日現在負担する一切の債務弁済のため、後記債権を譲渡する」とします。

3、ポイント―対抗要件
債権譲渡契約だけでは、債務者その他第三者に対抗することができません。債権譲渡を譲渡した債権の債務者あるいはその他第三者に主張するためには、債務者の承諾を得るか、あるいは債権譲渡の通知をする必要があります。
この通知・承諾はいずれも確定日付ある証書で行わなければなりません。
(確定日付は公証役場に行って、公証人に日付を証明してもらうものです。なお内容証明郵便による通知・承諾をしたときは郵便局の日付押印も確定日付の効力があります)
契約書にこのことをはっきり記載して、承諾又は通知が間違いなく行われるようにすることが大切ですので注意してください。
たとえば、「乙は遅滞なく丙に対し前条の債権譲渡の通知をなし、もしくはその承諾を得なければならない。右の通知、承諾は確定日付ある証書をもってなすものとする」とします。

4、ポイント―債権の特定
譲渡される債権の特定は慎重を要します。継続的取引の債権の場合は、「平成○年○月○日現在の○○等(商品名)の売掛債権残金○○万円」というように、時点、商品名、金額ではっきりさせます。

5、ポイント―詐害行為取消しに注意する
債権譲渡はその時期や方法により、他の債権者からみて詐害行為にあたるとして取り消される危険もあります。
会社が倒産寸前のときや不渡を出した後などです。このような時に抜け駆け的に一括債権の譲り受けなどしますと、他の債権者から詐害行為だとして債権譲渡契約の取消しの訴えを起こされたり、破産手続き開始決定を受けると、その譲渡が否認されてしますおそれがありますので、注意が必要です。

6、ポイント―随伴性
譲渡された債権に付随する利息、損害金、抵当権等の担保、保証についても、別段の意思表示がなければ、随伴して移転します。
たとえば、抵当権付き債権の場合「債権譲渡人甲、債権譲受人乙は原契約に基づき、平成○年○月○日付抵当権設定契約書により、平成○年○月○日~法務局受付第○○○○号をもって設定登記してある順位第○番の抵当権につき、遅滞なく債権譲渡による抵当権移転登記手続を行う」とします。

7、ポイント―通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた抗弁の対抗
譲渡債権の不成立、取消し、解除などによる債権の消滅、弁済、消滅時効の完成による債権の消滅、同時履行の抗弁権など債権の譲渡人に対抗できた事由は、債権の譲受人にも対抗されてしまいます。
ただし、債務者が異議をとどめないで債権の譲渡の承諾をしたときは、その抗弁権を債権の譲受人に対抗できなくなってしまいます。
債権の譲受人は債務者の有する抗弁権に注意する必要があります。