債務引受契約書

債務引受契約書作成のポイントを解説します。

1、ポイント―債務引受の種類に注意
債務引受とは、債務をその同一性を維持したままで、引受人に移転する契約をいいます。債務引受には2種類あります。元の債務者が従来どおり債務者としてとまる重畳的債務引受と、元の債務者が債務者の地位から離脱して免責を受ける免責的債務引受があります。
たとえば重畳的債務引受の場合「丙は乙の甲に対する前条の債務の金額につき債務引受をした。丙は甲乙間の前条債務について、その約旨に従い、乙と連帯して履行の責めを負う」とします。
免責的債務引受は「丙は乙が甲に対して負担する前条の債務につきこれを引き受け、乙に代わって甲乙間の約旨にしたがい甲に弁済を約した。甲は、丙が前条によって乙の債務を引き受けたことに基づき、乙の債務支払いを免責する」とします。

2、ポイント―選択
いずれかを選ぶかは状況によります。債務者が倒産もしくはそれに近い信用不安の状態に陥っていたときは、債務者の支援者、あるいは債務者が会社の場合はその経営者が債務引受を要求されます。このときは重畳的債務引受になります。これは連帯保証でもかまいません。
元の債務者が何かの事情で営業を廃止し、この営業を引き継ぐ者が出てきた場合、元の債務者は営業を譲る代わりに債務の支払いを免れることを欲します。新たな債務者は譲り受けた営業の見返りに債務支払いを引き受ける(免責的債務引受)ことになります。

3、ポイント―要件
重畳的債務引受は、債務者の意思に反しても債権者と引受人間の契約によってできます。なぜなら保証に類似するからです。
免責的債務引受は、債権者と引受人間で契約することもできますが、債務者が積極的に反対の意思を表示している場合にはできません。そこで、免責的債務引受は、債務者も加えた三者契約にしておくことが望ましいでしょう。

4、ポイント―効果
重畳的債務引受は、債務者と引受人間は連帯債務関係が生じます。
免責的債務引受は、債務は同一性を失うことなく引受人に移転します。
免責的債務引受をすると、旧債務についていた抵当権などの担保や保証の効力は設定者の同意がないと、失われますので注意が必要です。