相続分

1、意義
相続分とは、共同相続人の積極財産・消極財産を含む相続財産全体に対する各相続人の持分をいいます。


2、法定相続分
被相続人による相続分の指定がない場合、民法の定める相続分が適用されます。現在の民法の定める相続分の規定は、昭和56年1月1日以降に開始された相続について適用されます。いつの時点で相続が開始されたかについて注意する必要があります。

(1)配偶者相続人    配偶者の相続分     配偶者の相続分
           (昭和56年1月1日~) (昭和23年1月1日~)
①配偶者と子        2分の1         3分の1
②配偶者と直系尊属     3分の2         2分の1
③配偶者と兄弟姉妹     4分の3         3分の2

(2)血族相続人
<第1順位の血族相続人>
ア、子と配偶者が共同相続人の場合
子のグループが2分の1、配偶者が2分の1となります。

イ、子が数人の場合
子が数人あれば同順位で、かつ均等の相続分を有するのが原則。

事例の検討―法定相続分の計算>
被相続人Aが死亡し、相続人は妻Wと子B・C・Dです。Wと子B・C・Dの相続分はどうなりますか。

<答え>
妻Wの相続分は2分の1、子B・C・Dの相続分は各6分の1となります。

ウ、養子の相続分
養子は嫡出子の相続分を有します。縁組の日から養親の嫡出子としての地位を取得するからです。

エ、代襲資格者
代襲資格を有する直系卑属が数人あるときは、被代襲者が受けるべきであった相続分について、民法900条4号の規定に従い相続分を有します。

事例の検討―法定相続分の計算>
被相続人Aは、平成10年6月15日に死亡した。妻Wとの間には、実子B(平成6年9月27日死亡)およびCがあり、Bの妻DはAWと養子縁組しています。BD間にはE及びFの2人の子います。各相続分はどうなりますか。

<答え>
各自の相続分は、妻Wが2分の1、実子C・養子Dが各6分の1、Bの代襲相続人E・Fが各12分の1です。

<第2順位の血族相続人・・・直系尊属>
ア、配偶者と直系尊属が共同相続人である場合
直系尊属のグループが3分の1、配偶者が3分の2.

イ、同順位の直系尊属
均等の相続分を有します。

<第3順位の血族相続人・・・兄弟姉妹>
ア、相続人が配偶者と兄弟姉妹になった場合、兄弟姉妹が4分の1、配偶者が4分の3.

イ、複数兄弟姉妹がいる場合
同順位で、かつ均等の相続分を有します。

ウ、片親の親のみ同じ兄弟姉妹の場合。
半血兄弟姉妹(死亡した被相続人と親の一方を共通にするだけの者)と全血兄弟姉妹とがいる場合に、半血兄弟姉妹の法定相続分は全血兄弟姉妹の半分です。

事例検討―法定相続分の計算・兄弟姉妹で全血半血のケース>
被相続人Aには、妻Wがいるが、子はいない。両親MFも既に亡くなっている。Aには、兄弟B1、B2、B3がいますが、このうちB1、B2はAと両親を同じくしますが(全血兄弟姉妹)B3はAと母親をことにする(半血兄弟姉妹)。Aは、平成10年6月15日に死亡した。各相続分はどうなりますか。

<答え>
各自の相続分は、Wが4分の3、B1、B2が各20分の2(1/4×2/5)、B3が20分の1(1/4×1/5)です。
※B1、B2、B3の各相続分の対比は、B1:B2:B3=1:1:1/2であるが、整数比とすると、B1:B2:B3=2:2:1となる。対比の合計したものが分母となり、各比が分子となります。

事例検討―法定相続分・先妻の子と後妻の子がいるケース>
被相続人Aには、妻Wと子B、C、Dがいる。このうちBは、離婚した先妻Fとの間で生まれた子であり、C、Dは、AとWの間で生まれた子です。Aが死亡した。各相続分はどうなりますか。

<答え>
各自の相続分は、Wが2分の1、B、C、Dが各6分の1(1/2×1/3)です。
この事例は、子の資格で相続しているので、前述した半血兄弟姉妹間の相続とは異なります。


3、指定相続分
被相続人は、遺言で相続分を指定することができます。

(1)割合的指定
相続分が割合的に指定される場合があります。相続人全員の相続分を指定している場合と、一部の相続人の相続分を指定している場合があります。一部の相続人の相続分を指定している場合には、他の共同相続人の相続分は、法定相続分になります。
(2)特定遺産の指定
相続分の指定は、特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言の中で、特定の遺産をあげたときに同時に行われることがあります。
(3)遺留分を侵害する相続分の指定
相続分の指定は、遺留分に関する規定に違反することはできませんが、このような相続分の指定も当然には無効ではなく、遺留分権利者の減殺請求により、侵害の限度で効力を失うものと解されています。
                
相続分の変動

相続分の放棄

1、意義→共同相続人がその相続分を放棄することです。
実務では、共有持分権を放棄する意思表示ととらえ、相続分放棄者の相続分が、他の相続人に対して、相続分に応じて帰属します。

2、効果
相続人としての地位を失うことはなく、相続債務についての負担義務を免れません。 相続分の放棄により、他の相続人の相続分が変動します。

3、相続分の放棄の計算
相続分の放棄者以外の相続人の各相続分を合算した値を1とした場合の、各相続分の修正割合を新たな相続分とします。具体的には、相続分放棄者以外の相続人の各相続分の合計の逆数を、各相続分に乗じて求めます。

事例検討―相続放棄と相続分の放棄の違い>
被相続人Aの相続人は、妻Wと長男Bおよび長女Cである。妻Wと長男Bの相続分はどのように変化しますか。

1、長女Cが相続放棄をした場合。
<答え>妻Wの相続分は2分の1、長男Bの相続分は2分の1となります。

2、長女Cが相続分を放棄した場合。
<答え>長女Cの相続分4分の1は、「残された相続人の相続分率」に応じて配分されるので、妻Wの相続分は3分の2、長男Bの相続分は3分の1となります。
※相続放棄者以外の相続人の各相続分の合計=1/2+1/4=3/4
(この逆数=4/3)
W→1/2×4/3=2/3  B→1/4×4/3=1/3



相続分の譲渡
1、意義
遺産全体に対する共同相続人の有する法律上の地位を譲渡することです。すなわち、 積極財産と消極財産とを包含した遺産全体に対する譲渡人の割合的な持分の移転をいうのであり、遺産を構成する個々の財産の共有持分権の移転をいうのでありません。

2、効果
ア、譲受人の地位
譲受人は、譲渡人が遺産の上に有する持分的割合をそのまま承継取得し、遺産分割手続に関与することができます。
譲受人は、譲渡を受けた割合的持分に相当する積極財産のみならず、債務を承継することになり、債権者との関係では債務引受の問題となります。

3、共同相続人以外の第三者への相続分の譲渡
譲渡を受けた者の名義にするには、まず①相続を原因とする共同相続人への所有権の移転登記を経たうえで、②相続分の譲渡による持分の移転登記を順次申請します。

4、個々の相続財産上の共有持分の譲渡
特定の財産につき共有持分を譲り受けた第三者が共有関係を解消するためには、遺産分割審判でなく、共有物分割訴訟を起こさなければなりません。