建物売買契約書作成のポイント

建物売買契約書作成の注意すべきポイントについて解説します。
主要な論点は、土地売買契約書作成の説明を参考にしてください。

1、ポイント―建物を特定する
登記事項証明書で、公簿上の面積、家屋番号、構造、種類など明確にします。
未登記の建物の場合(表示登記もないとき)市町村役場の固定資産課税台帳で建物の所在、構造、床面積、所有者などを確認します。
実測床面積、現況も書きましょう。登記事項証明書上は、平屋であるが2階を増築してある場合、あるいはトタン葺を瓦葺に直してある場合など、登記事項証明書と実際が違っている場合、実際の構造、床面積等を記載する必要があります。

2、ポイント―敷地の特定も必要
土地の登記事項証明書を調査します。

3、ポイント―危険負担
危険負担とは、売買契約などで、各債務が履行される前に、一方の債務(たとえば売主の引渡し債務)が債務者(売主)の責めに帰することができない事由により履行不能となり消滅した場合、他方債務(買主の代金債務)も当然消滅するかというのが危険負担の問題です。
日本の建物は木造建物が多く、地震類焼などにより滅失する危険があります。類焼や地震による倒壊など不可抗力の場合、民法では買主が損をする、つまり代金を支払うのが建前となっています。
しかし、民法の危険負担の規定は任意規定なので、当事者が特約で排除することもできます。
そこで、契約書では、建物の所有権移転登記ないし引渡し完了前に類焼地震などで滅失した場合、売主がその損害を負担する、つまり代金を請求できないことを明記しておく必要があります。
たとえば「所有権移転登記、建物の引渡しのときまで、建物が滅失毀損したときは、甲(売主)の負担とし乙(買主)は代金の支払いを免れあるいは代金の減額を請求できる」とします。

4、ポイント―物件の現状
建物売買で重要なことは(特に中古住宅の場合)どんな状況で引渡すかということです。
空家と表示してあれば立退きの問題は生じません。売主にせよ第三者にせよ居住者又は占有者がいる場合には、明渡しの問題を決めておく必要があります。

5、ポイント―瑕疵担保責任(物件に欠陥があった場合)
特定物(たとえば中古住宅)の売買では、たとえ目的物に瑕疵があっても売主はそれを給付すれば債務を履行したことになります。買主は売買代金を支払っておきながらそれに見合う物の給付を受けられないことになり不公平になります。そこで売買が有償契約であることにかんがみて、法が特に売主に課した責任が瑕疵担保責任です。つまり売買契約の履行が完了した後発見された物件の欠陥について売主に責任を負担させるかの問題です。買主は、一定の要件のもとで、売買契約を解除したり、損害賠償請求できます。
瑕疵担保責任の民法の規定は任意規定なので、期間を延長したり、規定の適用を排除したりすることができます。

人が居住する住宅の新築物件の売買では、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」により建物の構造耐力上主要な部分と雨水の侵入を防止する部分の瑕疵については、売主から買主に引き渡されたときから10年間、売主に担保責任が課されることになります。
更に、新築住宅では構造耐力上主要な部分等に限らず、瑕疵担保の責任の期間を引渡しから20年にまで、延長する特約が可能です。

6、ポイント―冷房機等の扱い
冷暖房機、庭木、塀、門扉などについても契約書に記載しておくと安心です。

<借地権付建物売買契約書作成の注意点>
1、地主の承諾
借地上の建物の売買は、借地権も売買の目的となりかつ借地権の譲渡につき地主(土地の所有者)の承諾を得る義務を明確にする必要があります。民法では賃借権の譲渡には、貸主(この場合は地主)の承諾が必要であることを明確にしています。
承諾が得られない場合、裁判所に申立て許可をもらいます。
一般の建物売買では、所有権移転登記申請と引換に代金を支払うと記載しますが、借地権付売買では地主の借地権譲渡の承諾書と引換にするのがポイントです。
法律上は、地主の承諾なしに借地権を譲り受けてもこれを地主に対抗できないからです。
たとえば「甲(売主)は乙(買主)に対し、後記建物につき、平成○年○月○日までに残代金の支払いと引換に後記建物の所有権移転登記の申請、その敷地の地主丙の借地権譲渡承諾書の交付、同建物の空家としての引渡しをすべて履行する」と記載します。
地主の譲渡承諾書と引換に代金を支払うという形にするのがポイントです。

2、地主の承諾がないときの債務不履行の規定
たとえば「甲(売主)が第○条に規定された平成○年○月○日までに敷地所有権者丙の借地権譲渡承諾書を乙(買主)に交付できないときは、甲の債務不履行とみなし、乙は催告を要せず本契約を解除することができる」と記載します。

<地主が承諾しない場合の建物売買契約書作成の注意点>
1、裁判
地主が借地権譲渡につき不承諾であった場合、あるいは法外に高い承諾料(更地価格の1割くらいが相場なのに)を要求して事実上不承諾と同様のときは、借地人は借地借家法19条1項により、裁判所に対し、地主の許可に代わる裁判を求めることができます。
たとえば、「甲(売主)は、本契約締結後2週間以内に、借地借家法19条に基づき裁判所に対し、地主の借地権譲渡の承諾にかわる許可の裁判を求める申し立てを為すものとする」との規定を設けるのがポイントです。
代金の支払いについては、たとえば「代金○○万円は、甲(売主)が借地借家法に基づき地主の借地権譲渡の承諾にかわる許可の裁判を申立、許可の決定が確定した後、30日以内に後記建物の所有権移転登記申請と引換に支払う」と記載します。

2、裁判の結果
裁判所の借地権譲渡の許可がないとき、当然に売買契約が解除されるという規定をおきます。

3、完了までの期間
裁判所の手続きには、通常6か月くらい必要です。その間契約の目的である建物について、滅失毀損などの事態が起こる恐れがありますから、その場合の危険負担についての規定が必要です。(危険負担については前述参照)