土地売買契約書作成のポイント

土地売買契約書作成のポイントを基本から解説いたします。また、土地売買契約をする時の注意点も解説します。
以下順に、一般的な解説、土地売買の注意点、土地が農地だった場合、代金が完済されないおそれがある場合、土地に抵当権がついている場合、借地権がついている場合、古い建物が建っている場合について解説します。

1、ポイント―売主と買主を特定する
住所と氏名で特定します。

2、ポイント―本件土地の特定
どの土地を売買の目的にするのか、土地の所在、地番、地目、地積、実測などで特定します。特定しなければどこの土地を売買の目的にするのかわからないからです。

3、ポイント―土地の面積
土地の面積は登記簿に書かれてあります。ただし、これが必ずしも正確ではない場合があります。そこで測量士や土地家屋調査士に実測図を作成してもらうことが良いでしょう。そして登記簿上の地積と実測した面積を記載します。
分譲地の購入の場合、図面を付けなければ契約書だけからは正確にはわからないことが多いでしょう。ですから実測図を添付して、広い分譲地のうちどの部分であるかをはっきりさせておく必要があります。

4、ポイント―代金の額
代金の額の記載には、一括して金○○万円という方法と、一平方メートル当たり金○○万円という方法があります。
面積を標準にする場合には、実測か、公簿上の面積かを明らかにする必要があります。

5、ポイント―代金の支払時期
代金の支払時期も、平成○年○月○日というように確定した期限を決めるのが通常です。そして、大部分の金額を支払うときは土地の所有権移転登記を引換に支払うことを明記します。法律上これを同時履行といいます。

6、ポイント―所有権移転時期
法律では、当事者が売りましょう買いましょうと合意したとき所有権が移転するのですが、所有権移転の時期に特約があればそれが優先しますので、所有権移転登記のときに買主に所有権が移転するとします。
引渡しの時期も同様に平成○年○月○日とか、所有権移転登記申請と同時に土地を引渡すと記載しておきます。

<土地売買契約をする時の注意点>
1、まず土地の現況を確認します。公図と一致しているか調査します。
2、登記簿記載の面積を確認し、なるべく土地の面積の実測を調べ、両者が一致しているか確認します。
3、隣地との境界に争いがないか確認します。境界が確定していないときは、杭打ちなどをして確定します。
4、当該土地は道路に接しているか。道路は公道か私道か。私道なら使用する権限は設定できるか調べます。
5、土地の使用目的に照らして、法令上の制限はないか。
6、住宅建築用ならば、建築法上の規制や用途による制限はないか。
7、売主が真実の所有者であるか。登記簿上その売主が所有者として記載されているか。
8、当該土地に他人が借地権や抵当権をもっていないか。登記簿上にそうした権利の記載はないか。

<土地が農地だった時の売買契約書作成のポイント>
農地の売買には、当事者の合意に加えて、農業委員会又は知事の許可が必要です。農地を農地として利用する目的の場合には、農地法3条の許可が必要です。
農地を取得して、住宅などを建築する場合には農地法5条の許可が必要です。
いずれも許可がないと、農地の所有権は移転しません。
そのため、農地の売買は、許可を条件として所有権が移転するとか、許可がないと契約は解除されるという条件付きの契約になります。
たとえば「本件売買契約は、農地法3条の許可を条件とする」とか、「次の場合には、本契約は催告を要せず当然解除され、売主甲は買主乙に対し直ちに乙より受領した金員を返還するものとする。
甲が誠意を尽くして第○条により知事に許可申請をしたにもかかわらず不許可になったときもしくは本日より○カ月以内に許可がなされないとき」と記載します。
買主が農地法3条、5条の許可が出る前に代金の全部もしくは大部分を売主に支払ってしまう場合、所有権移転の仮登記を付けて売主の二重売買や不履行を防ぎます。

<代金が完済されないおそれがあるときの売買契約書作成のポイント>
所有権移転登記までに、土地売買の代金が完済されないおそれがあるときは、契約書の作り方に注意しましょう。
残代金確保の方法として、不動産売買の先取特権があります。先取特権とは日常ではあまり聞きなれない言葉ですが、法律の定める特殊の債権を有する者が債務者の財産から優先弁済を受ける権利(法定担保物権)です。土地の売買の場合、残代金の支払いの不履行があった場合、その売買の対象になった土地から土地の代価及び利息について優先弁済を受けることができます。

不動産売買の先取特権は、売買契約と同時に登記しなければなりません。したがって、たとえば「買主乙は、売主甲に、乙が後記土地の代金○○万円につき、甲のため不動産売買の先取特権保存の登記申請を為すものとする」と記載し、実際に先取特権の登記をします。
この時期をはずしてしまうと、不動産売買の先取特権の保存登記はできなくなりますので、注意しなければなりません。

<土地に抵当権がついている売買契約書作成のポイント>
抵当権付のまま土地を買うことを前提として、代金総額をまず決めて、そこから抵当債務の金額を引いて契約することが考えられます。たとえば「売買代金は後記抵当権負担の現状にて金○○万円とする」と記載します。
売主は、買主に債務を引き受けてもらい債務を免れる免責的債務引受を買主と債権者でやってもらうこともあります。売主は土地を相場より安く売った挙句別途債務を請求されては酷だからです。
また、買主による代位弁済という方法もあります。
たとえば「前条の債務の履行期までに乙は代位弁済、免責的債務引受その他の方法によって甲の丙に対する債務を消滅させなければならない」と記載します。

<土地に借地権がついている場合の土地売買契約書作成のポイント>
借地権の制限がついた土地を底地といい、底地を売買することもできます。
土地上の建物が正当に保存登記してあれば、新しい地主(底地の買主)は、借地人の権利を認めなければなりません。買主は建物を所有している借地人に建物を収去して土地から出ていけとはいえません。
買主は、当然に借地の賃貸人たる地位を承継するのです。
契約書でも賃貸人たる地位を買主が承継するという文言を確認のため入れておくのが良いでしょう。
「甲は現在本件土地を借地人丙によって賃貸中にして、乙は甲よりその賃貸人たる地位を承継するものとする。但し、既に履行期の到来した地代債権はこの限りでない」と規定します。
売主としては、借地人の借地権を新しい地主である買主に認めさせるのは、借地人に対する義務の一つだからです。
なお、借地契約の内容も確認のため記載します。たとえば、地代・目的・期間・敷金・権利金・借地権の譲渡又は転貸禁止・無断増改築禁止などです。ただ、借地契約の内容は従来の土地賃貸人(売主)と借主で作成した契約書を引用するのが通常です。前の契約書にない事項を勝手に追加はできないでしょう。

<古い建物を取り壊す土地売買契約書作成のポイント>
売主に対し所有権移転登記までに建物の取壊しと滅失登記を義務づける必要があります。
たとえば「甲(売主)は乙に次のとおり履行する。平成○年○月○日までに後記表示の土地上にある建物及び付帯施設を取り壊して右の土地を更地とすること。甲は所有権移転登記申請のときまで、その費用を自ら負担し、後記土地上にある建物の滅失登記を完了しなければならない」と記載します。
しかも、実際の取壊しを確実にするために、中間金(内金)の支払いについては建物取壊しを条件にします。
たとえば「土地の代金は、実測平方メートルあたり○○万円とし、乙(買主)は甲に対し、総額○○万円支払う。内金として平成○年○月○日までに、甲が後記土地上の建物を取壊し更地とすることを完了したときに金○○万円。平成○年○月○日までに、後記土地所有権移転登記申請ならびに引渡しと引換に残金○○万円」とします。