交通事故―傷害事故

交通事故の傷害事故損害賠償請求のポイントー医療費
1、医療関係費
(1)入院費・治療費については、請求書や領収書で立証します。
(2)入院の際の室料について問題があります。特別室料金です。被害者の社会的地位などにもよりますが、通常は平均的な室料を基準にすべきでしょう。入院者が重傷である時は個室の特別料金も加害者に請求できると考えられます。一般的部屋は満室で個室しか空いていなければこの個室の料金も請求できるでしょう。
(3)義足・義眼・義歯も治療費になるでしょう。
(4)付添看護料はそれが必要なものなら請求できます。ただ、付添人が必要かどうかは医師の指示によって決まります。診療報酬明細書に記載してもらいます。
入院患者がきわめて重症であり職業的看護人の他家族が付き添った場合、完全看護の病院なのに別に看護人を付けた場合、入院者が幼児なので母親が付き添った場合にも必要性があれば請求できます。
家族の場合には、職業的看護人の5~6割程度でしょう。およそ1日あたり5,500~7,000円と考えられます。通院付添費は1日あたり3,000~4,000円でしょう。
(5)雑費・交通費
入院中の諸経費について、これらを定型化し、入院1日あたり1,400~1,600円程度です。通院中の雑費については領収書で立証します。
通院のための交通費は、加害者に請求できます。


交通事故の傷害事故損害賠償請求のポイントー休業補償
2、休業補償
休業中の賃金を補償してもらえます。
ただし、交通事故で休業しても、会社から全額給料が支払われていた場合などのケースでは休業補償を加害者に請求できません。労災から6割支払われていた場合は、残り4割を請求できます。

(1)サラリーマンの場合
月収の証明書類は納税証明書や源泉徴収票です。これらの証明書がないと、勤務先の証明書などが必要となります。
ボーナスの減収も休業補償として請求できます。

(2)自営商工業者や自由業者の場合
年収を割り出して、12で割れば月収となりますし、365で割れば日給となります。原則は前年度所得税申告所得額を基準にします。
事業主が負傷して、事業自体を休業した場合はどうでしょうか。この場合休業中でも支払う固定費(従業員給料・家賃・保険料・光熱費など)や休業による客離れによる損害などありこれを認めた判例もあります。
1か月程度の休業であれば固定費や客離れによる損害まで請求することは難しいでしょう。

(3)農業・漁業者の場合
これも難しい問題があります。農業の人が農閑期に1か月休養しても農業所得に関係がないでしょう。1か月休んだらいくら減収になったかを証明することは難しいので、男子労働者の平均賃金を基準にせざるを得ないでしょう。
また、本当に減収のない場合は、休業補償は出ないでしょう。この場合慰謝料額を多少増額して調整するほかないでしょう。

(4)幼児・生徒・無職者の場合
休業補償はありません。

(5)主婦や失業中の人の場合
賃金センサスなど統計による平均賃金を基準にすることになります。

(6)休業期間については、医師の診断書で決めます。被害者が勝手に決めることはできません。


交通事故の傷害事故損害賠償請求のポイントー後遺障害
3、後遺症による逸失利益の計算方法

傷自体の治療は終了しても、その後に障害が残りその後一生事故前のようには働けないわけです。後遺症により労働能力が低下するわけです。この労働能力低下による損害を後遺症による逸失利益といいます。
後遺症による逸失利益の算定は次のようになります。
◇後遺症何級になるかを決定します。
◇後遺症による労働能力喪失率を決めます。
◇年収にこの喪失率を掛けると、年間の減収分が分かります。
◇次に労働能力喪失年数を定めます(原則は67歳までの年数)
◇年間喪失額に上の喪失年数を掛けます。
◇ライプニッツ式で中間利息を差引きます。

(1)後遺症の認定
医師に診断書を書いてもらって、自賠責保険に後遺症の補償請求をします。
すると自賠責保険の会社側で、後遺障害第何級と査定してくれます。すると後遺障害の等級を知ることができます。しかし、後遺障害に認定されないことがあります。割合からすれば認定されない方がずっと多いです。

(2)労働能力喪失率の決め方
労働能力喪失表というものがあります。労災保険の方で使用されているものです。これを重要な参考資料として、事情により、これを適当に増減します。
負傷者の職業、年齢、性別などを考慮して、その実情により労働能力喪失率を決めます。

(1)喪失年数や年収の定め方及びライプニッツ式計算

<年収の算定方法>
aサラリーマンの場合
源泉徴収票や納税証明書により年収を証明します。これらの書類がないときは会社の証明書などが必要です。
ボーナスも年収に加えます(源泉徴収票には前年度のボーナスも加えてあります)。
昇給については、確実な証明があれば、これを加算する判例があります。
公務員の俸給表や大企業労働者の給与規定などのように昇給基準が明確な定期昇給ならば確実な証明といえるでしょう。こういう基準のない中小企業では、昇給まで認められるケースは少ないでしょう。
退職金も逸失利益になります。

b自営商工業者や自由業者(医者とか税理士等)の場合
前年度の所得税確定申告のときの年間所得額を基準にします。しかし、多くの人は、この申告額は実際の収入よりずっと少ないのが現実です。
そこで、申告額以上に収入があったことを確実に証明できれば、申告額以上の収入を認められています。

c農業・漁業者の場合
農業所得基準表(税務署にある)のでこれを利用します。
しかし、実際はそれ以上あったというときは、被害者側で前年度の総収穫高を証明し、それから総経費を差引いて残高を年収とします。

d幼児・小・中・高校生の場合
年収というものがなく、すべて統計に基づいて計算します。

e主婦の場合
専業主婦には年収がないのですが、主婦でも逸失利益が認められます。
統計による女子労働者の平均賃金を基準にするほかありません。
パート収入ある主婦で、パートによる年収が女子の平均賃金を超えた場合は、その超えた額で計算します。

f職業婦人の場合
一生涯その職業についていたであろうかという点が問題となります。
結婚適齢期まで働いておりそれ以降は主婦として計算することもできますし、年齢や家庭環境からみて一生その職業についていたと予想される場合は職業人として計算するのが妥当でしょう。

g老人や失業者の場合
高齢で全く働いていない人の場合逸失利益はありません。
たまたま就労の意思と能力があり、失業中であった人は、統計による平均賃金を基準にしてよいと思われます。ただし、状況により逸失利益を認めない判例もあります。

<年間消費支出の算定方法>
仮に被害者が交通事故に遭わずに生存したとしても、自分自身も生活費を消費したはずですから、この分を収入から差し引くのです。
生活費の控除率が決まっています。
一家の支柱の場合は30%~40%、女子(女児・主婦を含む)は30%~40%、男子単身者は50%です。

<就労可能年数の算定方法>
もし事故に遭わなければあと何年働けたかという問題です。
幼児や未成年者は、18歳から67歳の間の49年間を就労可能年数とします。
自営業者、自由業者、農業者も平均して67歳とします。
67歳に近い人や67歳を過ぎていたらどうするでしょうか。
簡易生命表を見て、その人の平均余命を調べ、その余命数の半分くらいを就労可能年数とみてよいでしょう。
サラリーマンの場合、定年後はどう考えるかです。定年後の再就職が決定していたら、当然これを考慮します。
たぶん定年後も働いていたであろう場合、定年後も再び働いていたと推定して年齢に応じた就労可能年数を算出しその年齢層の労働者の平均賃金で逸失利益を計算します。
主婦の場合は通常は67歳まででしょう。事故時に67歳である場合は、健康であれば平均余命の半分くらいは認められるでしょう。

<中間利息の控除方法について>
交通事故で障害を受けた人が、定年までの全給料を現在一時にもらうと事故に遭わなかった人より有利となります。金融機関に預けると金利がつくからです。
係数表ができていてそれを利用して計算します。

<減収がなければ逸失利益はない>
後遺障害第何級との診断が出ても現実に減収がなければ、逸失利益はないことになります。たとえば、商店主が指1本切断した場合、商売には影響しない場合は逸失利益はありません。顔の傷も女優のような場合は別として、一般には労働能力には関係しません。慰謝料で調節します。


交通事故の傷害事故損害賠償請求のポイントー慰謝料
4、傷害についての慰謝料
(1)受傷そのものに対する慰謝料
被害者の入院・通院した事実と傷害の程度が比例しているところから、入・通院の事実を精神的肉体的な苦痛の証明の材料と考えて「入・通院慰謝料表」という基準表があります。これを参考にします。

(2)後遺症に対する慰謝料

交通事故―死亡事故

交通事故損害賠償請求ー死亡事故損害項目のポイント1
1、医療関係費
 死亡されるまでの医療関係費です。治療費や入院費の他、付添人費用、入院雑費、交通費などがあります。

2、葬儀関係費用
 裁判所の傾向は、原則として130万円~170万円位で、具体的立証をしなくとも、この基準額は認められます。それ以上葬儀にお金をかけても被害者の負担になってしまうでしょう。
 香典返しの費用は、損害となりませんので加害者に請求できません。遺体の搬送にかかった費用は実費を認められます。
 お墓の建設費用や仏壇購入費は、判例で認めたものがありますが、いろいろです。

3、雑費等
 入院中の雑費や交通費です。


交通事故損害賠償請求ー死亡事故損害項目のポイント2
4、逸失利益
 逸失利益とは、被害者が事故に遭わずに生存していたら67歳になるまでの間に取得したと推測される収入のことです。
これが一番重要な問題です。死亡事故のとき、被害者側で一番重要な作業は逸失利益の計算です。亡くなった被害者の生前の収入額を証明することです。この証明は被害者側でしなければなりません。
大まかな計算は次のとおりです。
(1)被害者(死亡者)の年収を出します。
(2)被害者の年間消費支出額を出します。
(3)上の年収から年間消費支出額を差引いて、年間純利益を出します。
(4)被害者の就労可能年数を出します(原則として67歳までの年数)
(5)上の年間純利益に就労可能年数を掛けます。ただし、ライプニッツ式計算法によって中間  利息を差引きます。

5、年収の算定方法―逸失利益の算定について
(1)サラリーマンの場合
源泉徴収票や納税証明書により年収を証明します。これらの書類がないときは会社の証明書などが必要です。
ボーナスも年収に加えます(源泉徴収票には前年度のボーナスも加えてあります)。
昇給については、確実な証明があれば、これを加算する判例があります。
公務員の俸給表や大企業労働者の給与規定などのように昇給基準が明確な定期昇給ならば確実な証明といえるでしょう。こういう基準のない中小企業では、昇給まで認められるケースは少ないでしょう。
退職金も逸失利益になります。

(2)自営商工業者や自由業者(医者とか税理士等)の場合
前年度の所得税確定申告のときの年間所得額を基準にします。しかし、多くの人は、この申告額は実際の収入よりずっと少ないのが現実です。
そこで、申告額以上に収入があったことを確実に証明できれば、申告額以上の収入を認められています。

(3)農業・漁業者の場合
農業所得基準表(税務署にある)のでこれを利用します。
しかし、実際はそれ以上あったというときは、被害者側で前年度の総収穫高を証明し、それから総経費を差引いて残高を年収とします。

(4)幼児・小・中・高校生の場合
死亡時に年収というものがなく、すべて統計に基づいて計算します。

(5)主婦の場合
専業主婦には年収がないのですが、主婦でも逸失利益が認められます。
統計による女子労働者の平均賃金を基準にするほかありません。
パート収入ある主婦で、パートによる年収が女子の平均賃金を超えた場合は、その超えた額で計算します。

(6)職業婦人の場合
一生涯その職業についていたであろうかという点が問題となります。
結婚適齢期まで働いておりそれ以降は主婦として計算することもできますし、死亡時の年齢や家庭環境からみて一生その職業についていたと予想される場合は職業人として計算するのが妥当でしょう。

(7)老人や失業者の場合
高齢で全く働いていない人の場合逸失利益はありません。
たまたま就労の意思と能力があり、失業中であった人は、統計による平均賃金を基準にしてよいと思われます。ただし、状況により逸失利益を認めない判例もあります。


交通事故損害賠償請求ー死亡事故損害項目のポイント3
6、年間消費支出の算定方法

仮に被害者が交通事故に遭わずに生存したとしても、自分自身も生活費を消費したはずですから、この分を死亡者の収入から差し引くのです。
生活費の控除率が決まっています。
一家の支柱の場合は30%~40%、女子(女児・主婦を含む)は30%~40%、男子単身者は50%です。

7、就労可能年数の算定方法

死亡した人が、もし事故に遭わなければあと何年働けたかという問題です。
幼児や未成年者は、18歳から67歳の間の49年間を就労可能年数とします。
自営業者、自由業者、農業者も平均して67歳とします。
死亡時に67歳に近い人や67歳を過ぎていたらどうするでしょうか。
簡易生命表を見て、その人の平均余命を調べ、その余命数の半分くらいを就労可能年数とみてよいでしょう。
サラリーマンの場合、定年後はどう考えるかです。定年後の再就職が決定していたら、当然これを考慮します。
たぶん定年後も働いていたであろう場合、定年後も再び働いていたと推定して年齢に応じた就労可能年数を算出しその年齢層の労働者の平均賃金で逸失利益を計算します。
主婦の場合は通常は67歳まででしょう。死亡時に67歳である場合は、健康であれば平均余命の半分くらいは認められるでしょう。

8、中間利息の控除方法について。

交通事故で死亡した人が、定年までの全給料を現在一時にもらうと事故に遭わなかった人より有利となります。金融機関に預けると金利がつくからです。
係数表ができていてそれを利用して計算します。


交通事故損害賠償請求ー死亡事故損害項目のポイント4
9、慰謝料
精神的苦痛に対する損害賠償です。この算定も定型化しています。
死亡者が一家の支柱の場合2700~3100万円、一家の支柱に準ずる(共働きの主婦など)の場合2400~2700万円、その他の者は2000~2500万円を基準に算定されます。