相続の手続きの全体構造

1、当事者の確定
遺産分割協議をする当事者(相続人)を確定します。遺産分割協議は相続人全員が参加しないと無効となってしまうからです。また相続人以外の人は、法律で許されている人以外参加できないからです。
交際もなく、他の相続人が生きているのか確実にわからない場合など、戸籍を取寄せ確認する必要があります。登記のときにも相続人の戸籍は必要になります。
また、お話で聞いた人以外に相続人が絶対にいないかも戸籍で確認します。めったにないことですが、認知された嫡出子の問題があります。
さらに家を出て行ってしまい行方が分からない相続人(不在者)、いまや生死すらもわからない相続人(失踪者)がまれにいることもあります。
そのような問題もきちんとクリアーすることが大切です。

また、相続放棄があった場合、相続欠格、相続人の廃除があれば相続資格がなく、遺産分割に参加できません。
相続欠格は、5つの類型があるのですが、例えば遺言を偽造や隠匿等した人です。相続人の廃除とは、被相続人を虐待したり、重大な侮辱したり、推定相続人に著しい非行があり、かつ家裁の廃除審判があったときです。この点も、確認が必要です。

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2、遺産の調査・評価
相続人の方などから聞き取りして遺産の範囲をおおまかに確定します。
被相続人ある程度の交際等があれば、遺産の範囲はよく知っていることが多いと思います。しかしそうでない場合もありますし、よく知っているとしてもしっかり資料で等で確認をするということも重要です。また、遺産の範囲をめぐって法律上の問題を生ずる場合もあります。

調査の方法は、不動産の場合は登記事項証明書や公図・名寄帳・固定資産税評価証明書などで、被相続人名義の不動産の有無を確定します。ここで、例えば名義は亡き父だけれど、生前に長男に口約束で土地・建物を譲渡していた場合など、きちんと解決する必要があります。

預貯金については預金通帳・預金残高証明書、場合によっては取引明細書の取得も必要な場合があります。
預金については、例えば預金の出捐者は亡き父で、名義人は次女という場合などということがよくありますが、法律上の預金者は誰か。仮に次女だとすると預金は遺産の範囲に含まれないことになります。では亡き父でしょうか。判例を参照し判断する必要があります。
被相続人の預金を管理していた相続人が相続開始前後にわたり預金を使い込み、使途不明金を出した場合もあります。どう考えるのか。
遺産の範囲をめぐり、いろいろ法律上の問題が生ずる場合もあります。

なお、重要なのは、借金の確認です。いち早く確認しなければなりません。場合によっては、相続放棄や限定承認が必要だからです。また住宅ローンなどはきちんと処理する必要があります。

さらに把握した遺産の価値を評価します。
相続人全員の意思疎通があり、いわゆる常識的な評価ということで、厳密な遺産の評価をしないこともありますが、全員の合意があれば許容されます。
不動産の場合は、固定資産税評価額を基礎としたり、近隣の取引事例における市場価格から評価したり、意見がもめれば不動産鑑定士に鑑定してもらうこともあります。
注意することは、遺産の評価時は相続開始時(被相続人死亡時)ではなく、遺産分割時ということです。
株式の場合は、上場株式は市場価格の一定期間の平均額とか、非上場株式は場合によっては会計士の評価に委ねたほうがよいこともあります。

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3、相続分の確定
①まず、法定相続分(子は2分の1・配偶者は2分の1とか)があります。これが基本です。
しかし、相続人間で協議と合意があれば、この法定相続分に拘束されないで相続分を決めることができます。
これにより、被相続人と相続人をめぐる諸事情、あるいは相続人間の諸事情を考慮して柔軟かつ妥当に解決できます。

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②相続分で考慮すべきことは、特別受益と寄与分です。
特別受益とは、例えば、父が生前、次男が結婚するにあたり家建築の資金として1千万贈与した場合などです。この事情を亡き父の相続にあたり、相続人間で公平の観点から持ち戻して考慮再計算しようというものです。
寄与分とは、例えば次女が父を療養看護し、ヘルパーさん等を雇わずにすみ出費を免れたという特別の貢献があった場合、相続財産がそれだけ維持されたのだから、相続にあたり公平の観点から次女にプラスに考慮しようとするものです。
特別受益と寄与分、これを忘れずきちんと考慮することも大切です。

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4、遺産分割協議と遺産分割協議書の作成
遺産分割請求権は、消滅時効にかからないので、各相続人はいつでも分割請求できます。
ただ、時間がたつと相続人が死亡し遺産をさらにその相続人が相続するなどになり、相続人の数が増えて事情が複雑になったり、遺産が散逸し事実上遺産の配分が期待できなくなることもあります。そこで事情が許せば早期の遺産分割が望ましいでしょう。
ポイントは、全員集まるなり、持ち回りであれ、電話、手紙であれ、分割協議案をしっかり示し、それを各相続人がきちんと認識・理解し、全員が合意をするということです。
このプロセスを大切にしてください。そうでないと、のちにその協議の存否や内容をめぐり紛争が起きる可能性もあります。

またその時、例えば認知症の方がいるような場合、後で問題が生じないよう対策をとる必要(後見人の選定など)がある場合もあるでしょう。
また、未成年者の人がいる場合も、その利益保護の観点から、対応(特別代理人の選定)が必要です。

分割の方法として、甲土地は長男に、預金は次男にと現物で分割する方法(現物分割)。遺産は土地建物しかないが、それを長男が次ぐので現物分割できないが、その代わり長女に相当の金銭等を支払う方法(代償分割)。
土地など管理も大変だし、固定資産税も高そうなので、売却しそのお金を分ける方法(換価分割)があります。
協議で分割する限り、上のどの方法とることもできます。各相続人間の具体的事情を考慮して、よく話し合って決めることが大切です。

重要なことは、後でもめないように、証拠として遺産分割協議書をしっかりと作成することです。これがポイントです。
遺産分割協議書は、不動産名義の変更などのときに実際上必要となります。

5、遺産分割後の手続
不動産名義の変更、預貯金、株式、自動車、ゴルフ会員権等の名義変更があります。その他、各権利・義務に関する書類の名義等の変更や各種届出があります。
早めに手続きをすることが大切でしょう。

わからないことがありましたら嶋田法務行政書士事務所までお気軽にご相談して下さい。